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「あんたは、あいつの事が好きらしいな」
隻眼の男は私の目を真っ直ぐに見つめると、そんな事を言った。一瞬言葉に詰まったが、ここで反論しても仕方がない。恋愛云々は別として、私が彼に好意を抱いている事は、見抜かれていても当然だ。
「もちろん、彼の事はとても気に入っています」
「ふうん……あんたはとても、珍しい存在だな」
「……どういう意味ですか」
「こんな事言いたかねぇんだが」
ウルフはタバコを灰皿に押し付けると、手を組んで身を乗り出した。
「あいつは、軍の中では随分と嫌われていた」
「……そう、みたいですね」
「だが、あんたはあいつを友人だと思っている。俺の記憶の中じゃ、そんなヤツぁ他に一人しかいねぇ」
「カイマン中尉?」
「知ってるのか?」
「お二人に会う数日前に会って、話を」
「そうか」
「私はただの腰巾着かと思っていたのだがな」
私とウルフの会話に入ってきたのは、レオン。顎に手を当てて、首を傾げている。
「どうやら、違ったらしいな」
「あれのどこをほじくり返したら、二人も友人が出来るような要素が出てくるのやら」
全く理解出来ない、と首を振ってコーヒーを口に含む。私は無神経な事を言ったは虫類の男を睨み付けたが、こんな小娘に睨まれたからとて、少しでも悪かったなどとどこの誰が思うものか。逆に、にっこりと微笑まれてしまう。
「だが、それであいつは命拾いをしたみてぇだな」
「命拾い?」
「あぁ。あんたは不思議に思ったんじゃねぇのか? 同じ元スターウルフだというのに、コーネリアじゃ俺やこいつは第一級の危険人物で、あいつは小物扱いだって事をよ」
「それは、まぁ……でもあなたの前歴を考えれば」
「これは俺の推測なんだがな」
私の言葉を遮って、ウルフが続ける。
「コーネリア軍の捕虜になったベノムの兵士が、俺達に関しては比較的口を開かなかったんだろうよ。だが、あいつに関しては、全部喋ったんだろうな。だがその結果、コーネリア軍はあいつを大した事ねぇヤツだって判断したんだろうさ」
「上手く立ち回ったなと褒めてやりたい所だが、あいつの場合そこまで考えての行動では無かったからな……寧ろアンドルフ軍の兵士が愚かだったと言うべきか。憎い小僧を窮地に追い込むつもりが、逆に助けてしまうとは」
さぞかし悔しい思いをしているに違いないと可笑しそうに嘲笑してみせるレオンに、私の膝の上にある拳が、自然ときつく握られた。
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