新鮮な野菜を千切り、限りなく透明のガラスの器に盛る。ドレッシングをかけて、アクセントにプチトマト。
 朝食の支度を整え始めるのが、いつも大体コーネリア標準時にして朝7時。キッチンに置いてある小さなテレビが、汚染されたゾネスの海が、少しずつ綺麗になってきている事を伝えていた。朝の真っ白な太陽の光が、リポーターを照らしている。叔父の名前が何度か彼女の口から発せられ、叔父の行動を心苦しく思うと同時に何も知らなかった自分を恥じる。いつもの葛藤。だが、慣れる事は無い。


 と。


「……フレンチトーストのにおいぃ……」
 くんくん、と鼻を鳴らして、まだ半分寝ている状態のがキッチンへと入ってきた。寝癖の付いた頭に、一番上のボタンが外れたままのパジャマ姿。これもいつもの光景だが、やはり慣れる事が出来ない。その無防備な姿に、慌てて目を背ける。彼が心を乱しているなどとは露ほども思わず、はよたよたとテーブルにつくと、くはぁ、と大あくびをしてそこに突っ伏した。
「……お前はいつも、朝食の支度が終わる頃に起きてくるな」
 何もせずにおいたらこのまま二度寝に入ってしまいそうな彼女の前に、何とか心を落ち着かせて、フレンチトーストとベーコンエッグが乗った皿を置き自分もまた席につく。彼女は目を擦りながら身体を起こすと、手を伸ばしてガラスのコップに牛乳を注いだ。
「……うん……だって、良い匂いがしてくるんだもん……」
「匂いで目が覚めるのか。……一体何時に目覚ましをセットしているのだ」
「ん〜……最近は、目覚ましやってないよ」
 だから、寝坊もしないのと、サラダを口に含んでへにゃ、と嬉しそうに微笑む。心の底から美味しいと思ってくれている事に喜びを感じつつ、同時に彼女の言葉に引っ掛かった。
「……目覚ましをしないから、寝坊もしない? 一体どういう意味だ」
「えっとねぇ……ほら、目覚ましだと止めたらおしまいだから、また寝ちゃうの。でも、アンディが来てから、朝ご飯の匂いで目が覚めるから、食べたいな〜って、起きるの」
 共に過ごすうちに解ってきた事だが、彼女はどうも朝は弱いらしい。訊ねると、まだ寝ている頭を必死に回転させて、何とか説明しようと難しい顔で言葉を探す。出てきた結果がこのよく解らない説明だが、彼女としては満足らしい。それ以上言葉を紡ぐことなく、フレンチトーストをかじり、またほっぺたが落ちました、という顔をする。
「朝ご飯の甘い香りで目が覚めるのって、良いね。私、朝起きる時が一番幸せ」
 アンディが居て良かった、と心からの笑顔で言われ、彼の胸が五月蠅いくらいに高鳴った。

 

 

 

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