5.寝るときの服装

 

 

 は未だに、彼の寝間着姿を目にした事が無かった。

 自分は初日から風呂上がりにパジャマ姿だったが──何しろここは自分の家なのだから──、彼は常にTシャツとジャージ姿。最初の頃はその格好のまま寝るのだろうと思っていたが、共に過ごして話をしているうちに──どこで確信を得たのかは覚えていないが──どうも違うらしい。割と神経質な彼なので、寝る直前に着替えをしているのだろう。別に何を着てても私は気にしないのになぁ、と思う。何しろスターフォックスに保護されていた時は周りは男のみで、最初の頃こそきちんとした格好をしていたけれども、1年も経過する頃にはパンツ一丁でうろうろしている姿もしょっちゅう目にしてきた──誰かは本人のイメージを損なう為に伏せておく。というより特定出来ない──のだから、こちらはもうすっかり慣れている。それなのに彼が自分の前で寝間着姿にならないのは、プライドが許さないからなのだろうか。それとも、無防備な姿を晒す事に抵抗があるのだろうか。どちらにしろ、まだこの船でくつろいでもらえてないのかな、と少し悲しく思う。

 そして、隠されると余計に見たくなる。

 別に取り立てて珍しい物でも無いが、一度見たいと思ったら何が何でも見たくなった。せめてどんな物を着ているか洗濯物でチェックをしようと思ったのだが、何分家事命の彼のこと。朝自分が起きる時には洗濯機が既に回っていてチェック不可能だし、そういえばと思い出した頃には洗濯物は全て片付けられている。それならば寝る前に自室でくつろいでいる時にと突撃してみたが、本当にベッドに入る直前まで着替えないらしく、ジャージ姿。本人はそうは思っていないのだろうが、まるで絶対に見せないぞという思いがあるかのようで、悔しい。だから彼女は、外から様子を伺って、着替えを押さえる事にした。アンドリューが自室に入ったのをこっそり通路の影から確認して、扉に耳を押し当てて中の様子を探る。
 暫くは特に何かをしているという音はしなかったが、今日はあのまま寝てしまったのかと思い始めた頃に、ようやく動きがあった。いかにも脱いでいますという衣擦れの音に続いて、ばさり、と布を放り投げる音。間違いない、彼は今、着替えている。一体何を着て寝ているのだろう。普通の地味なパジャマか、それともフリフリのついた派手なパジャマか。もしかしたらシルクかもしれない。何だかキラキラしているかもしれない。いや、意外に真っ赤なガウンだったりして──
 がさがさという音が消えた時、彼女はわくわくする胸を落ち着かせようと深呼吸をして、大声で「入るよ」と一応宣言してから、返事を待たずに──何やら慌てた声が聞こえてきたが、気にしない──扉の開閉パネルに手を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼は、素っ裸だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごっ、ごめん!」
 慌てて扉を閉めて全速力で自分の部屋へと逃げて、普段は使わない鍵を掛ける。怒って追いかけてくるかと思ったが、その気配は無い。ほぅ、と安堵の溜息を吐いて、彼女はへたりと床に座り込んだ。

 

 パンツ一丁は、予想した。

 でも──

 

──アンディって、裸族だったんだ。

 

 それは確かに見せられないよねと、はドキドキする胸を押さえて、もう一度溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、変な誤解をされている事に気付いたアンドリューが、必死に弁解をしパジャマ姿でもうろつくようになったことは、言うまでもない──