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2.リモコン争奪戦
暫定所有者とその同居人は、実にくだらない事で言い争いをする。 「だって私これ見たいんだもん! 毎週ずっと楽しみにしてたんだもん!」 今日の言い争いは、見たい番組が重なってしまった、という事らしい。“頭の中”で、今日の番組一覧を検索する。なるほど、確かに9時から2時間、ドラマの最終回──今までは9時放映開始と10時放映開始のそれぞれ1時間番組で、ぶつからなかったらしい──が重なっている。テレビ局というのは不思議な物で、いつも面白い番組を争うようにして同じ日、同じ時間に放映し、つまらない物はつまらない物同士で戦わせる。何故時間をずらしてバランス良くプログラムを組まないのだろうと、ロボットの間では疑問の声が挙がっている。ロボットですら思うのだから、きっとロボットでは無い者もそう思っているだろう。だが、誰しも思っているのに、決してバランス良く組み立てられることはないのだ。人という者は愚かだな、とロボット間で嘲笑されていることに、テレビ局は気付いていない。 そしてこの二人も、ここにいるロボットに嘲笑されている事に気付かない。 大体、テレビがここにしか無いという訳では無いのだ。長期間航行を想定して造られたこの船は、ストレスを出来るだけ解消する為に、個室にも簡単な娯楽施設、例えばそう、このテレビなる物体もちゃんと設置されている。見たい番組がかち合ってしまったのなら、自分の部屋に行って見れば良いだけの話だ。それなのに、二人は意地でもここで見ようとする。争いで負けた時も一緒に並んで見ているので、一人で見るのが寂しいのだろうか。もう二人とも年齢だけなら既に成人しているはずだし、肉体年齢も自分が走査する限り年相応。しかしこの行動は、果たして年相応なのだろうか。これだから生身の存在というのは、理解しがたい。 『!!』 たかがチャンネル権の争いだというのに、まるで生死を駆けた戦いを繰り広げているかのような殺気立った顔で、二人が同時にこちらを向く。驚くには値しない。これはいつもの事だ。彼はやれやれと溜息を吐き、次にぴっと甲高い音を立てた。 しかし。 「……今度、ちゃんとルール決めようね」 ソファーに並んで座って同じ番組を見つつ、先程の勢いはどこへやら、のんびりと会話をしている二人に、ロボットは同時に平和も感じていた。
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