|
聞いていた話とは随分違うなぁ、とは青年を目の前にしてふと思った。 彼の評判はことごとく悪く、嫌な話ばかり耳に入ってきたというのに。
その声とは、今の姿はあまりにも遠すぎる。
「何だ?」 「うぅん、なんでも。器用だなぁと思って」 「ふふん、お前が不器用すぎるだけだ」
得意げに小鼻を膨らませながら、これでも謙遜のつもり、もしくは嫌味のつもりなのだろうか。
確かに初めて会った時は、自分も「何だこの無駄に偉そうなヤツは」と思ったものだが、狭い船内で長い間共に過ごすうちに、段々と印象が変わってきた。
あんまり良いヤツには見えなかったけど、と同い年のカエルの青年は言った。
あんな落ちこぼれに用は無い、と彼の元同僚の一人が言っていたという噂を聞いた。
あれほど腹の立つ男は居ない、と数少ない彼を知る人物は異口同音に答えた。
でも。
仕事の時にさりげなく(あからさまに恩を着せつつ)助けてくれるし。
船内の家事一切を勝手に(文句を言いながら)全部やってくれるし。
色んな事を(主に文句と過剰な自慢にしか見えない謙遜を)素直に全部言葉にしてぶつけてくれるから、解りやすいし。
一緒に居て、飽きない相手だと思うのだ。
確かに、腹の立つ事も多いけれど……。
「うわぁ、相変わらず見事だねぇ。どこがほつれてたのか全然分かんないよ」 「だろう。お前ではこうはいかないに違いない。私が居て良かったな」 「ホント、感謝してます」
アンディ様々、と手を合わせて拝んでやると、更に気分が良くなったのだろう。鼻息荒く、胸をえへんと得意げに張らせている。
単純だから、扱いやすいし。何であんなに悪い事ばかり言われるんだろう?
私は、結構、好きなんだけどなぁ……。
「……あぁ、もうこんな時間なのか」 「え? ……あ、ホントだ。船の中に居ると時間の感覚が分かんなくて困るね」 グレートフォックス号は船内の照明を時間によって変えていたみたいだけど、と言うと、彼の表情が一変した。
「あいつらの話は、聞きたくない」
きっとあのゴーグルの下で、眉を吊り上げているのだろう。 口が滑った、と即座に後悔。
私にとっては彼らはかけがえのない友人達だけど、
彼にとっては、大事な身内の仇なのだから。
「……ごめん」 「………………」
素直に頭を下げたけれど、彼の怒りはおさまらない。 す、と立ち上がって、私に背を向ける。
「……どこ行くの?」 「食事の支度だ」 「私、手伝おうか?」 「いらん。お前が触ると爆発する」
こちらをちらとも見ずに部屋から出ていく彼。 またやってしまったと、頭を抱えつつ深く溜息。
何度も経験して、その度に反省しているはずなのに。 何故いつも、彼の傷口を開かせる様な事を言うのだろう。
何故こんなにも、悲しいのだろう。
「」
後ろから声を掛けられて、弾かれた様に身体を起こす。
「……その。何か、食べたい物は、あるか?」
あるなら作ってやる、と口を尖らせながらの言葉に、頬が緩んでいくのが自分でもはっきりと解る。
やっぱり、彼は言われている程、イヤな奴では無いのだ。
だってこうして喧嘩しても、向こうから近付いてきてくれるのだから。
やっぱり手伝うよ、とは立ち上がって彼に駆け寄った。 アンドリューの頬がうっすら染まっている事に、彼女は気付かなかった。
とりあえず書いてみた実験物なので、色々気にしないでください(爆) 何も考えないで思いつくまま文章を並べていくとこうなるという反面教材です(爆)
|